静岡の地元情報が集まる口コミサイト:eしずおか

eしずおかトップ > 日刊いーしずトップ > しずおか自転車便り > 第4回 僕が見た、ツール・ド・フランスの現実

2012年09月13日

第4回 僕が見た、ツール・ド・フランスの現実

 2012年9月9日(日)に岩手県にて開催された「ツール・ド・三陸」の取材に行ってきました。このイベントは、東日本大震災で大きな被害を受けた陸前高田市で行われる、自転車人による復興支援イベントです。その模様は近いうちに、皆さんには紹介することとしますね。

 今回は本場のツール・ド・フランスの取材レポートです。

 今年のツール・ド・フランスも無事終わり、来年はいよいよ100回目を迎えます。ツール・ドという冠言葉がついた自転車イベントはよく目にしますが、フランスのように全行程3000km、3週間を超えるような過酷なレースは他にはないでしょう。山岳コースはもちろん、平坦なコースも含めてどのコースも見る側にとっては楽しく、とくに画面からはフランスの街並みや里山、そしてアルプスなど目を見張る風景が入ってきます。でも取材してみると、その裏側にはいろいろと感じさせるものがあります。

第4回 僕が見た、ツール・ド・フランスの現実


 昨年のツール・ド・フランスのコースでの一コマです。南仏のモンペリエ(montpellier)で、第14ステージを取材しました。港町がどこでもそうであるように少し治安が悪そうで、移民も多いせいか、街の中はパリとは違う空気が流れています。前日には、取材のロケ、当日は、2時間以上前から、撮影ポイントを決めるために場所取りに行ったり、来たり。まだまだ道路端には観客も少なく、準備の甲斐もあって最高のポジションで選手を迎えることができました。1時間くらい前から観客らしき人が集まり出します。ただし、ここではどうも自転車好きというよりも家族連れ、それも子供多さが目立ち気になりました。

 そして大会関係者の車両が数十分おきに通過するようになると僕の周りは、子供たちで溢れてきました。それも子供の体裁はちょっと日本とは異なります。裸足にサンダル、それも薄汚れた服装、肌の色もいろいろ、話す言葉もいろいろのようです。この子達がここに集まる理由は、すぐにわかりました。選手が通過する前に大会スポンサーの広告宣伝カーが何十台も連なって走ります。それぞれがデコレーションをして走りながら車上にいるスタッフが観客にポーズを取り、さらに自分たちのグッズを道路脇にいる人たちに投げつけるのです。その光景はまるで、「餅まき」か「はなさかじいさん」です。

第4回 僕が見た、ツール・ド・フランスの現実

第4回 僕が見た、ツール・ド・フランスの現実


 さきほどの子供たちは、このグッズを拾うために集まって来ていたのでした。もちろん子供たちだけでなく、大人たちも。自転車好きの大人や子供が道路脇に陣取っていたのではなく、少しでも多くのお菓子やグッズを拾いたいという人たちがほとんどのようでした。山岳ステージでは道路わきにはサイクルジャージをまとった自転車好きのおじさん、おばさんが多く見られます。しかしここでの光景は、それとは全く異なり、実はこのような光景はいたるところで見られるのです。むしろこの光景が、ツール・ド・フランスの現実かもしれません。

第4回 僕が見た、ツール・ド・フランスの現実


 子供たちが道端で拾い終わった頃に、頭上からヘリコプターの爆音が聞こえ、前方のはるか先には選手を先導するバイク、その後ろに先頭集団が、そしてその集団はあっという間に通過していきます。僕はこの瞬間を狙ってシャツターを押したのですが、カメラを離したころには、先ほどの子供たちの姿はすでに道端から居なくなっていました。ふと振り返ると多くの戦利品を拾った子供たちの誇らしげな顔、またそれを見守るうれしそうな親御さんの顔、彼らは選手の応援はそっちのけで、すでに帰り支度でした。ツール・ド・フランスのいろいろな楽しみ方があることを気づかされた、一時でした。

第4回 僕が見た、ツール・ド・フランスの現実


 ツール・ド・フランスというレースがなぜ、フランスで100回も続いているのか。それはただの自転車好きのためのレースではなく、貧しき人も富める人も楽しめるイベントだからなのでしょう。そこに、毎年の誘致合戦が国内だけでなく、国外でも繰り広げられる理由があるのだと思います。来年の100回目の大会もさぞかし楽しみにしている子供たちが多いとことでしょう。

 日本各地で開かれるツールも、ただ走るだけでなく自転車に乗らない人たちからも愛されるイベントにしないと、いつまでも続くものにはならないかもしれませんね。

(村井 裕)

 + + + + + + + + + + + + + + + + + + + +

次回、第5回の公開は 9/27(木)正午の予定です。

これまでの連載記事を読む
 第1回 しみずママチャリライドとは
第2回 清水港と三保半島をぐるりと巡ろう
第3回 清流沿いを走りながら里山の秋を味わおう




Posted by eしずおかコラム at 12:00

日刊いーしず コラム一覧

このページの上へ▲

削除
第4回 僕が見た、ツール・ド・フランスの現実