2014年01月21日
第30回 自転車で未来をデザインしよう
静岡市が取り組む『自転車を活かしたまちみがき』
日本は、自転車先進国と呼ばれるオランダ、デンマークに次ぐ自転車利用率を維持している国です。それも子供からお年寄りまですべての年代で利用者がいるという特異さは、世界を探してもそうはありません。しかし、自転車先進国と言えるかというとそうでもないのです。日本の自転車利用は世界に誇れるものか、と投げかけられた専門家も特に語れるものはないでしょう。自転車の安全性は高いとは言えず、自転車利用が増え、自転車の事故死はなかなか減少傾向とならない。また、自転車の利用距離は他の先進国と比べると短く、自転車の平均速度は先進国と比べて時速で約5キロ遅く、平均時速10キロ程度と推定されています。つまり、自転車の利便性が十分に活かされていないといえるのです。こうした特徴の理由は、「自転車の安全走行空間の確保」がなされていない、つまり歩道を歩行者と混じって通行するため自転車本来の速度は発揮できず、結果として自転車通行の快適性は低く、利用距離も短くなっている。また、歩道を進む歩行者にとって自転車は危険な車両となることで、多くの事故が発生している。その状況を踏まえると先ごろ、国が、「自転車は車両で車道走行が基本」の原則を徹底したことは、自転車利用からみて大きな前進といえます。
昨今、日本各地で自転車のまちづくりが、とても盛んです。行政からは、いろいろな施策が矢継ぎ早に出ているようにも感じます。「自転車に関してはフラッシュなアイディアが出やすい」ということもあってレンタサイクル、観光ツアー、そして自転車レースなどの企画・イベントはその一例かもしれません。
自転車の施策というと、やはり大きく二つに分けて考えるべきというのが僕の意見です。
一つは、前段に述べた「自転車の安全走行空間の確保」。これは自転車利用促進というよりも、クルマ社会からの脱出という都市の総合計画の見直し、そして市民のライフスタイルの変革など、大きなテーマが背景にあり、ハード的な面があります。ステークホルダーを含めての多くの議論を重ねて進めていかねばなりません。ドイツのフライブルグをはじめ世界には、既に自転車主体とした交通計画が策定されている都市があります。しかし日本にとって、いや静岡市においては、そこにたどり着くまでとても難しい道のりであるのは間違いありません。
もう一方は、「自転車を活かしたまちづくり」。あくまでも自転車を生活する上での便利な手段として捉えて取り組む、という視点でのソフト事業です。ジャンルでいうと、観光、環境、健康という分野で活かす、それぞれのジャンルの目的を達成するための最適な手段の一つとして自転車を活用することです。
このように自転車施策を体系化する、つまり大きく二つに分けるだけで、理解しやすくなります。ちなみに僕が今まで取り組んできたのは、後者の「自転車を活かしたまちづくり」なのです。僕はこのソフト事業を「自転車で未来をデザインする」という表現をしています。

田辺市長と僕(向かって右)
さて、僕の暮らす静岡市は、田辺市長の肝いりで『自転車を活かしたまちみがき』という施策が進んでいます。田辺市長とは自転車を通じて懇意にしていただいていますので、ここで僕から『自転車を活かしたまちみがき』を盛り上げるためのヒントをお伝えします。
★ヒント1 地域経済の活性化と雇用の創出を目指そう!
自転車関連ビジネス(海外ではバイクビジネス、と呼ばれています)の地域経済への波及効果のことです。バイクビジネスは小規模ながら盛況で、ローカル経済を確立しているという事例がポートランドやアビィニョンをはじめ世界各地でみられ、花形産業の一つにもなっています。静岡市では、どのようなバイクビジネスを描けるでしょうか。僕たち自転車人には、皆さんがわくわくするようなアイディアがたくさんあります。このアイディアを企画にすることで高齢者の方が働ける場を創れることはもちろん、若者の起業の機会を生み出すまち静岡市としての発信がはじまります。

アビィニョンの自転車タクシー
★ヒント2 観光利用の促進で自転車の聖地へ!
僕が関わっている「しみずママチャリライド」は、清水地区エリアを中心とした自転車の観光ガイドツアーです。今年で10回目を迎え、プレイベントまでを併せますと参加者は延べ300人に達します。これだけの人数をこのツアーに集めることが出来たのは、清水の魅力、そして何よりも自転車の楽しさを多くの人たちと共感できたからです。温暖な静岡市は一年を通じて、自転車が走れる土地柄です。これは自転車の聖地となる上で、最高の条件ではないでしょうか。

しみずママチャリライド
★ヒント3 健康促進とライフスタイルへの提案
昨年、僕がTV放送「たけしの健康エンターティメント みんなの家庭の医学」という番組に出演するきっかけになったのは、静岡県が健康寿命の長い県として上位にランキングし、その理由に自転車利用者が多いからではないか、という発想からでした。また、先ごろ総務庁からは、肥満度の最も低い県は静岡県という発表があり、これも自転車利用者(静岡市は自転車通勤・通学の割合)が多いからではないかと言われています。健康寿命が長く、スポーツジムに通うことなくスリムな体型を維持する静岡人のライフスタイルは、自転車生活の大きな魅力なのかもしれません。

被災地復興イベント ツール・ド・三陸
★ヒント4 広がる自転車カルチャーは人をつなげる
自転車はこれまで、映像、文章、音楽、写真、絵画、パフォーマンスなど、あらゆる表現形態で描かれてきました。また、多くの自転車イベントが、世界各地で開かれています。毎年4月、僕は都内を走る東京アースディライドに参加します。自転車で走るためだけに全国各地から集まる自転車人は200人を超えます。ここでは、自転車を通じてすばらしい交流が生まれます。交流といえば、ウエブもその一つです。自転車人が編集する静岡市の情報がウエブから世界に発信されたらどうでしょうか。静岡空港からは台湾や韓国からのサイクリングツアー客が訪れることはもちろん、ヨーロッパ、北米の各都市とは自転車を通じて多くの交流事業が生まれるかも知れません。自転車が、人と人をつなげる役目を果たすのです。

協働で実施したe-Bike project
★ヒント5 協働というパワーが自転車施策を進める
北米のシカゴでは自転車関連のNPOが、恵まれない子供たちに自転車を通じての社会教育、職業訓練、ルールとマナーの啓発プログラムを実施して社会的にも成果を上げているそうです。自転車の楽しさは、子供から高齢者まで同じように味わうことができることです。垣根が低いことで行政、市民、企業、そして学校においてもまちづくりの共通のキーワードとして取り上げられています。自転車の施策は行政だけで進めるのではなく、市民が参画して取り組むものと僕は考えます。つまり協働というパワーが、自転車施策を進める上で必要なわけです。市民参画の機会をつくることが上手な静岡市にとっては、最も得意とするところです。

東京アースディライド
最後に、これらのヒントを活かした具体的な取組みの事例は、日本国内はもとより、アムステルダム、ベルギー、コペンハーゲン、シカゴなどの世界各地で目にすることが出来ます。しかしながら自転車の施策は、いつも失敗と成功の繰り返しであることも承知しておかなければなりません。そして自転車は必ずしも、すべての問題を解決してくれるわけではありません。しかし、自転車はこれからのまちづくりに欠かせないものであることは、今は疑う余地が無いということも事実です。静岡市が自転車の先進都市となるよう、僕も走り続けたいと思います。皆さんも一緒に自転車で静岡市の未来をデザインしてみませんか。
日本は、自転車先進国と呼ばれるオランダ、デンマークに次ぐ自転車利用率を維持している国です。それも子供からお年寄りまですべての年代で利用者がいるという特異さは、世界を探してもそうはありません。しかし、自転車先進国と言えるかというとそうでもないのです。日本の自転車利用は世界に誇れるものか、と投げかけられた専門家も特に語れるものはないでしょう。自転車の安全性は高いとは言えず、自転車利用が増え、自転車の事故死はなかなか減少傾向とならない。また、自転車の利用距離は他の先進国と比べると短く、自転車の平均速度は先進国と比べて時速で約5キロ遅く、平均時速10キロ程度と推定されています。つまり、自転車の利便性が十分に活かされていないといえるのです。こうした特徴の理由は、「自転車の安全走行空間の確保」がなされていない、つまり歩道を歩行者と混じって通行するため自転車本来の速度は発揮できず、結果として自転車通行の快適性は低く、利用距離も短くなっている。また、歩道を進む歩行者にとって自転車は危険な車両となることで、多くの事故が発生している。その状況を踏まえると先ごろ、国が、「自転車は車両で車道走行が基本」の原則を徹底したことは、自転車利用からみて大きな前進といえます。
昨今、日本各地で自転車のまちづくりが、とても盛んです。行政からは、いろいろな施策が矢継ぎ早に出ているようにも感じます。「自転車に関してはフラッシュなアイディアが出やすい」ということもあってレンタサイクル、観光ツアー、そして自転車レースなどの企画・イベントはその一例かもしれません。
自転車の施策というと、やはり大きく二つに分けて考えるべきというのが僕の意見です。
一つは、前段に述べた「自転車の安全走行空間の確保」。これは自転車利用促進というよりも、クルマ社会からの脱出という都市の総合計画の見直し、そして市民のライフスタイルの変革など、大きなテーマが背景にあり、ハード的な面があります。ステークホルダーを含めての多くの議論を重ねて進めていかねばなりません。ドイツのフライブルグをはじめ世界には、既に自転車主体とした交通計画が策定されている都市があります。しかし日本にとって、いや静岡市においては、そこにたどり着くまでとても難しい道のりであるのは間違いありません。
もう一方は、「自転車を活かしたまちづくり」。あくまでも自転車を生活する上での便利な手段として捉えて取り組む、という視点でのソフト事業です。ジャンルでいうと、観光、環境、健康という分野で活かす、それぞれのジャンルの目的を達成するための最適な手段の一つとして自転車を活用することです。
このように自転車施策を体系化する、つまり大きく二つに分けるだけで、理解しやすくなります。ちなみに僕が今まで取り組んできたのは、後者の「自転車を活かしたまちづくり」なのです。僕はこのソフト事業を「自転車で未来をデザインする」という表現をしています。
田辺市長と僕(向かって右)
さて、僕の暮らす静岡市は、田辺市長の肝いりで『自転車を活かしたまちみがき』という施策が進んでいます。田辺市長とは自転車を通じて懇意にしていただいていますので、ここで僕から『自転車を活かしたまちみがき』を盛り上げるためのヒントをお伝えします。
★ヒント1 地域経済の活性化と雇用の創出を目指そう!
自転車関連ビジネス(海外ではバイクビジネス、と呼ばれています)の地域経済への波及効果のことです。バイクビジネスは小規模ながら盛況で、ローカル経済を確立しているという事例がポートランドやアビィニョンをはじめ世界各地でみられ、花形産業の一つにもなっています。静岡市では、どのようなバイクビジネスを描けるでしょうか。僕たち自転車人には、皆さんがわくわくするようなアイディアがたくさんあります。このアイディアを企画にすることで高齢者の方が働ける場を創れることはもちろん、若者の起業の機会を生み出すまち静岡市としての発信がはじまります。
アビィニョンの自転車タクシー
★ヒント2 観光利用の促進で自転車の聖地へ!
僕が関わっている「しみずママチャリライド」は、清水地区エリアを中心とした自転車の観光ガイドツアーです。今年で10回目を迎え、プレイベントまでを併せますと参加者は延べ300人に達します。これだけの人数をこのツアーに集めることが出来たのは、清水の魅力、そして何よりも自転車の楽しさを多くの人たちと共感できたからです。温暖な静岡市は一年を通じて、自転車が走れる土地柄です。これは自転車の聖地となる上で、最高の条件ではないでしょうか。
しみずママチャリライド
★ヒント3 健康促進とライフスタイルへの提案
昨年、僕がTV放送「たけしの健康エンターティメント みんなの家庭の医学」という番組に出演するきっかけになったのは、静岡県が健康寿命の長い県として上位にランキングし、その理由に自転車利用者が多いからではないか、という発想からでした。また、先ごろ総務庁からは、肥満度の最も低い県は静岡県という発表があり、これも自転車利用者(静岡市は自転車通勤・通学の割合)が多いからではないかと言われています。健康寿命が長く、スポーツジムに通うことなくスリムな体型を維持する静岡人のライフスタイルは、自転車生活の大きな魅力なのかもしれません。
被災地復興イベント ツール・ド・三陸
★ヒント4 広がる自転車カルチャーは人をつなげる
自転車はこれまで、映像、文章、音楽、写真、絵画、パフォーマンスなど、あらゆる表現形態で描かれてきました。また、多くの自転車イベントが、世界各地で開かれています。毎年4月、僕は都内を走る東京アースディライドに参加します。自転車で走るためだけに全国各地から集まる自転車人は200人を超えます。ここでは、自転車を通じてすばらしい交流が生まれます。交流といえば、ウエブもその一つです。自転車人が編集する静岡市の情報がウエブから世界に発信されたらどうでしょうか。静岡空港からは台湾や韓国からのサイクリングツアー客が訪れることはもちろん、ヨーロッパ、北米の各都市とは自転車を通じて多くの交流事業が生まれるかも知れません。自転車が、人と人をつなげる役目を果たすのです。
協働で実施したe-Bike project
★ヒント5 協働というパワーが自転車施策を進める
北米のシカゴでは自転車関連のNPOが、恵まれない子供たちに自転車を通じての社会教育、職業訓練、ルールとマナーの啓発プログラムを実施して社会的にも成果を上げているそうです。自転車の楽しさは、子供から高齢者まで同じように味わうことができることです。垣根が低いことで行政、市民、企業、そして学校においてもまちづくりの共通のキーワードとして取り上げられています。自転車の施策は行政だけで進めるのではなく、市民が参画して取り組むものと僕は考えます。つまり協働というパワーが、自転車施策を進める上で必要なわけです。市民参画の機会をつくることが上手な静岡市にとっては、最も得意とするところです。
東京アースディライド
最後に、これらのヒントを活かした具体的な取組みの事例は、日本国内はもとより、アムステルダム、ベルギー、コペンハーゲン、シカゴなどの世界各地で目にすることが出来ます。しかしながら自転車の施策は、いつも失敗と成功の繰り返しであることも承知しておかなければなりません。そして自転車は必ずしも、すべての問題を解決してくれるわけではありません。しかし、自転車はこれからのまちづくりに欠かせないものであることは、今は疑う余地が無いということも事実です。静岡市が自転車の先進都市となるよう、僕も走り続けたいと思います。皆さんも一緒に自転車で静岡市の未来をデザインしてみませんか。
Posted by eしずおかコラム at 12:00